新井博子さん

生活するにはこれくらい静かでのんびりなほうがいい。少し動けば手の届く範囲になんでもあります。

写真:新井博子さん1

Profile

新井 博子 さん(あらい ひろこ)小矢部市出身

移住歴4年 職業フランス料理店経営

小矢部市で生まれ育ち金沢の高校に進学後、調理師専門学校に通うため京都に、その後台湾へ渡ったのち、地元の小矢部にUターンという変化に富んだ経歴の持ち主だ。

石動駅にほど近い場所で「おやべの小さなビストロ マルカッサン」というフランス料理店を経営していている新井さん。小矢部市で生まれ育ち金沢の高校に進学後、調理師専門学校に通うため京都に、その後台湾へ渡ったのち、地元の小矢部にUターンという変化に富んだ経歴の持ち主だ。

富山の高校ではなく金沢の高校を選んだ理由を聞くと、

「地元は特別好きというほどでもなくて。父が金沢の高校を出ていたこともあり、父と同じ高校に進学しました。物心ついた頃からずっと同じ人間関係なので知らない人、知らないところに行きたかったんです」。

料理人の道を目指して京都の調理師専門学校に通い、実習助手として数年勤めた後、祇園近くのワインダイニングで働いているときに人生の転機が訪れた。

「年に2回くらい5,6日間ほどまとまった休みがもらえたのですが、アジアの中で台湾が一番楽しかったんですよね。休みの度に4,5回行って、これは住めるぞと(笑)」

30歳になる前でタイミングも良かった。

「ビザ自体は1年ありました。語学留学が3ヶ月だったので、最短で3ヶ月、最長で1年。旅行の延長気分で行ってみようって…。そうしたら語学留学が終わる月に知り合いから、台湾で飲食店を開く人がシェフを探していると。二つ返事で引き受けました」。

飲食店時代に、台湾好きになったきっかけのひとつ、台湾ドラマの大好きな俳優とも会えたことで、達成感もあったそうで、

「日本に帰ろうかなと思っていたとき、友人からもうひと勝負しないか?と。その友人と会社を立ち上げ飲食店をオープンしました。お店の壁を塗ったりカウンターを作ったり、一から作り上げたんですけど楽しかったですね」。

自分の店を立ち上げ刺激的な毎日を送っていた頃、実家の前の道の幅が広がる計画が本格的になったことで、転機が再び訪れることに…。

「自分の目指すフレンチをやりたいって気持ちもありましたし、お店を持つなら今なんじゃないかって。小矢部に戻りました」。

開店準備にはカナダから妹が駆けつけ、装飾を手伝ってくれたりパン皿を焼いてくれたり、家族の力を結集して準備に励み、2018年1月、実家の土地に「おやべの小さなビストロ マルカッサン」をオープン。

写真:新井博子さん2


高校卒業後、15年ほど経って地元に戻ってきて改めて感じることは、ご近所付き合いの大切さと難しさだと話す。オープンにあたり、本人いわく「ほわっと始めた」という言葉通り、店の宣伝など一切していなかったこともあり、近所で噂になっていたらしい。

「新井さんとこが180cmのフランス人をカナダから連れてきて台湾料理をやるらしいって(笑)。懐に入ってしまえばすごく良く面倒を見てくれますけど入るまでが難しいのかなって。田舎にありがちなグイグイくる感じでもなく、適度な距離感があるんですよね」。

小矢部だけに限らず、移住となればその土地の人たち特有のコミュニケーションのとり方があるだろう。人間関係をゼロから築き上げる過程を楽しめる、そんな人のほうが移住には向いているのかもしれない。
また、趣味など共通の何かがあると打ち解けやすいと教えてくれた。

「移住を決める前に、できる限り足を運んで、その土地の人たちと触れる機会を設けたほうが絶対良いです。趣味と絡められたら尚良いですね。趣味が畑なら畑体験ツアーとか。小矢部の中でも地区によって特色があります。私が住んでいるのは石動駅近辺ですが、山の方や散居村が広がる地区など、小矢部の中でもどこに住むのかといったところまで、できる限り吟味した上で決めたほうが良いかもしれませんね」。

小矢部全体の環境(アクセスの良さや自然環境、施設の充実さなど)が気に入ったら、即移住ではなく、住む場所を入念に調べてから決めることが移住成功のポイントのようだ。

小矢部に戻ってきて良かったことを聞くと、自分のペースで好きなことができることと、ウインタースポーツという答えが返ってきた。

「スキー場には車で3,40分で行けますし、この冬はよく行きましたね。あとは街から見える景色が気持ちいいんですよ。例えば埴生から島に向かう陸橋からの景色とか。クロスランドタワーを見ると、小矢部だなぁって落ち着きます(笑)」。

コロナ禍により特に飲食店は大打撃を受けた。マルカッサンも例外ではなかったが、

「今までやってきたことの集大成のような1年でした。お店の空気を止めないよう、自分のもってるものをすべて出して、少しでもひっかかればと…」。

「小矢部で美味しいフレンチが食べられる」と客が客を呼び、県外からのお客も増えてきた。

「小矢部産の食材を使っているとお客様に伝えたときの反応が嬉しくて。小矢部の方はすごく喜んでくれるし、小矢部以外の方には小矢部を知ってもらえます」。

と嬉しそうに話す新井さんの表情が印象的だった。

上:新井博子さん、下:キッチンの写真

写真:コーヒーとデザート